日々に疎し

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キリクチという魚 - 後編

2日目は初日と同じ天川村にある別の川、洞川(どろがわ)へ向かうことにした。

少し早めについたため周辺を散策することにした。

 

洞川の温泉街を少し抜けた所にある竜泉寺を訪ねた。境内に綺麗な湧水の泉があるのが印象的だ。

 

境内を抜け温泉街を散策する。

 

ふと橋から川を覗くと釣り人ならばギョッとする光景が見られた。魚の群れだ。それもコイやハヤではなく鱒の魚影だと一目でわかる。ニジマスだろうか。イワナやアマゴではなさそうだ。この辺り一体は禁漁になっているとのことだがそれにしてもこの数である。興奮して少しクラクラしてしまった。

釣り欲が高まったので上流部に向かい釣りを始めることにした。

 

入渓する。水量がそれほど多くはないが渓相は良さそうだ。

 

竿を出すとすぐにアマゴが反応してくれた。透明感のある綺麗な魚体だ。朱点も多い。

 

こちらの個体はパーマークが綺麗だ。この川ではアマゴをかなり放流しているようで反応がなくなるようなことはなかった。ただイワナは全く顔を見せてはくれない。

 

川と並行して登山道があったため上がって少し歩くことにした。

 

看板を見つけた。釣り以外の情報は全く調べていなかったので、この道が熊野古道だったと初めて気が付いた。

 

女人結界とはすごい名前だなと思いながら入り口付近で少し休憩させてもらった。

 

女人結界のある場所から少し上流でやっとイワナの反応があった。朱点は薄くニッコウイワナの血が混ざっているように見える。

 

この個体は朱点がほとんど目立たず明らかにニッコウイワナのタイプだ。フライを丸呑みにしてしまっている。

 

最後に出てくれた個体は朱点があるがそれに縁取りが見られニッコウイワナの特徴が出ている。この川の個体はヤマトイワナの特徴とは明らかに異なっている。

キリクチのような個体が反応してくれなかったためこの川を上がり野迫川村まで移動することにしたのだが、野迫川村ではキリクチが天然記念物となっていて禁漁となっているようだった。それで釣りのできる川が見つからず夕方になってしまい仕方なく宿をとることにした。

 

その宿で興味深い文献を見つけた。昭和49年に書かれた野迫川村史というものでそのなかに魚類覚え書という章があり、そのなかにキリクチに関する記述があった。それによると弓手原川のイワナ(キリクチ)が世界でのイワナの南限ということだ。またキリクチという名前の由来は頭部の角度がアマゴに比べてきつく、刃物で切ったような形をしているためであろうと書いてある。

イワナの生息域については明治23年と昭和28年の水害によって下谷、中谷、͡コノ谷のイワナは絶滅し昭和48年時点で弓手原川本流のカワセ谷、ナ谷、アズマタ谷にのみ生息が見られるとのことだった。

あまりにも脆弱で貴重な個体群に台風などによる水害、人の手による密漁などでこの幻の魚キリクチの未来はあまり明るくないように思えてならない。文献を読み終えまた状況を確かめるためにこの場所に来ようと思いながら眠りについた。